2024.04.08

温室効果ガスを削減するためにインバータの課題を解決する

理工学部 先進エネルギーナノ工学科※4年 浅野陽也

※2021年4月より理系4学部開設。この学部学科名はそれ以前のものです。

海外で日本の最新技術の高さを実感

私は小学5年生から中学3年生まで、父親の仕事の関係でマレーシアに住んでいました。現地で日本企業の工場を見学したり、日本製、中国製、マレーシア製の家電製品を使った経験から日本ブランドの製品の品質は高いと実感。いつかはものづくりの最新技術を学び、日本の技術を世界に広めたいと思っていました。そのために英語は必須。英語と最先端の技術が学べる大学として選んだのが関西学院大学理工学部※でした。野村勝也先生の研究室を選んだのは、「半導体」「電気回路」など理解しやすいテーマに取り組んでいることに加え、半導体の分野で私たちの生活に身近な電気機器に関する研究がしたいと思ったことが大きな理由です。

パワーエレクトロニクスの基幹技術インバータ

私の研究対象であるインバータは、パワーエレクトロニクスを支える重要な技術です。冷蔵庫やエアコンなどの家電製品から電車、産業機械まで幅広い電気製品に使われている装置です。普及が期待されている電気自動車にもインバータは搭載されています。インバータの役割は、発電所から送られてきた電気をその機器に適した電気に変えること。インバータによって使う電気の量を変えることができるので、電力を無駄遣いせずに適切な電気使用量になることから節電・省エネにつながります。たとえば夏の暑い日にエアコンのスイッチを入れた時、最初は急速に部屋を冷やし、室温が下がってきたらゆるやかな冷房に変えることができるのもインバータのおかげ。インバータの性能向上は、日本はもちろん、世界からも期待されています。

インバータのノイズ低減に挑む

製品の利便性を上げ、環境にもやさしいインバータですが、作動中にノイズが発生し、ほかの電子機器に誤動作などの悪影響を与えることが知られています。例えば自動車では、ノイズのせいでラジオが聞けなくなったり部品が壊れたり、最悪の場合は車が暴走することだってありえます。過去にはインバータのノイズが原因でモノレールが衝突した事故が国内でありました。なのでインバータにとってノイズ問題は解決しなければならない課題であり、私は電気自動車に用いられる三相インバータのノイズを減らすための研究を進めています。

条件を一つずつ変えて測定し、ノイズを抑える方法を発見

現在は小型の電気自動車ともいえる電動カートを対象に、カートを動かすためのモーターやインバータを自ら作製して研究を進めています。モーターとインバータを動かしたときのノイズを計測し、その結果から仮説を立てて実験を繰り返すことで、ノイズが伝わる経路を突き止めることができ、さらにノイズを減らすことに成功しました。こうした研究と併せて、実際に電動カートを制作。自作したことによって、自動車やモーター、インバータへの理解が深まりました。最初はモーターを回転させることができなかったのですが、搭載機器を一つずつ調べて原因を突き止め、最終的には走行ができるようになりました。

数がまとまれば温室効果ガス削減に貢献できる

一つの電気製品のインバータで減らすことができる電力消費量はわずかなものですが、全世界の電気製品、電気自動車に高性能のインバータが搭載されたら、削減できる電気消費量は大きなものになり、地球規模での温室効果ガス削減に大きく貢献するという分析結果があります。私の将来の夢は、世界中の人の生活の質を上げること。卒業後、電子材料や機能素材などを扱う企業に就職し、日本の技術力で世界の人々がより良い生活を送れるように力を尽くしたいと思っています。そのため、大学で取り組んできた三相インバータのノイズ解消は、後輩の皆さんへ引き継ぐことになりますが、この研究の成果が電気自動車だけでなく、より多くの製品に生かされることを願っています。

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