神学部/神学研究科

神学部/神学研究科

キリスト教への理解を深め、人間と社会の本質を探る

神学部は1889年、関西学院の創立とともに開設された本学で最も古い歴史ある学部です。開設以来“キリスト教の伝道に従事”する人材の育成(学院創立時の「憲法」第二款「目的」)を理念の根幹としつつ、「学問としての神学」を探究することを目的に、信仰のあるなしにかかわらず、すべての学生が異なる価値観を尊重しながら学んでいます。近年においては、ボーダーレスとなった国際社会を念頭に、視野をより広く持ち、さまざまな事象に対応できる幅広い知識と柔軟な思考力を養うことが求められています。そうした社会的背景のもと、本学部ではキリスト教を切り口に、思想・文化・社会・人間そのものについて深く考えます。卒業生は、教会、学校、一般企業、社会福祉法人など幅広い分野で活躍しています。

●基本DATA
学生数 124名  募集人員 30名  専任教員数 13名
●取得可能な資格
中学校教諭一種免許状 宗教、高等学校教諭一種免許状 宗教/公民、学校図書館司書教諭、国際バカロレア教員認定証(DP)

学生インタビュー



森 悠華さん
キリスト教思想・文化コース4年
大阪・豊中高校出身

■学部の学び
今までは知らなかった「価値観」に出会えた神学部の授業

私は高校の倫理の授業で「過去の偉人たちが何を考えて生きてきたか」に関心を持ち、大学で「思想」「価値観」がいかにつくられるかを知りたいと思い、宗教や思想を学ぶことができる神学部への入学を決めました。入学後に受けた授業で印象深いのは「教会と礼拝体験」です。一般的に日本人は日常的に宗教への関心が低い傾向にありますが、世界では宗教を信仰するのは当たり前。教会で礼拝をすることの意義を知ることができました。また、「人権とキリスト教」の授業ではLGBTQの方から話を聞くことができ、自分が当たり前と考えていた価値観が当たり前でないことに気づかされました。

■もう一つの学び
自分の学部の学びをさらに高める他学部での学び

ビジネスにも興味があった私は、複数分野専攻制を利用して、商学部経営コースの授業を受けています。「消費者が何を考えて購買しているか」を見つけるマーケティングは、私が関心を持つ「人の価値観」に共通するところが多いと感じました。また、違う分野の知識を組み合わせると、自分の学びを高めることができます。例えば、現在若い世代の「教会離れ」が深刻ですが、神学部で得た信仰に関する知識と商学部で得たマーケティングの知識を生かせば解決策が見つかるのではないか。このように4年間を通して多角的な学びができることが関西学院大学の魅力だと思います。

学部の特色

 現代的なアプローチも取り入れ4つの領域からキリスト教を理解する

■幅広い4つの領域と「伝統的」「現代的」の2つのアプローチで社会に生きる学び
神学部では「聖書学」「歴史神学」「組織神学」「実践神学」の4つの領域を、「伝統的」「現代的」といった2つの方向からのアプローチを用いて、キリスト教への理解を深めます。具体的には、キリスト教の聖書、歴史・文化、教理、実践などについて学修。また、フィールドワークを通じて現場へのアプローチも試みます。聖書の研究だけでなくさまざまな人物の思想・著作や活動などの研究を含む歴史、キリスト教の根本的な考え方・立場である教理、礼拝や祈祷などの実践、キリスト教音楽、美術や建築など、じつにさまざまな側面からキリスト教的見地に基づいて考察を行います。

■「キリスト教伝道者コース」および「キリスト教思想・文化コース」の2コースを設置
1年生では、キリスト教神学の基礎を学修。2年生より幅広い専門科目を深く学んでいきます。「キリスト教伝道者コース」は「伝道者養成」という神学教育の伝統を受け継ぐものであり、学術的な研究を深めるとともに、実践的なカリキュラムを通して、キリスト教の伝道者としての深い専門知識を身につけます。「キリスト教思想・文化コース」は、聖書などを通してキリスト教という世界的な思想の核心に迫り、現代社会におけるキリスト教の役割や可能性を考察。学問の領域を越えて社会の課題・事象を解明します。

 世界レベルの資料が揃い、神学研究をリードする研究者が指導。学外からも一流の講師陣

神学研究拠点として第一線の研究者が教員として集結する神学部。福祉・医療・教育・宗教など、現場の第一線で活躍する講師による講座も充実。社会的な実践について、より具体的に現代に即して学修する機会が得られます。大学には西洋初の印刷聖書や現存する最古の日本語訳聖書、13世紀の『貧者の聖書』などの世界的に貴重な歴史ある資料も豊富。神学部には、専用の図書室も完備し、学生の学びをサポートしています。

 人間力を磨き上げるために少人数制の学びやすい環境で学問としての「神学」を学ぶ

神学部は少人数制の授業が特徴です。1年生では「基礎演習」が開講され、文献の探し方や文章の書き方、プレゼンテーションなどの基礎的なアカデミックスキルについて学びます。2年生からはより専門的な科目が増えるほか、「文献講読」などの演習授業も充実。3、4年生では少人数制のゼミ「研究演習」にも所属し、自身の興味あるテーマについて探究していきます。どの授業も教員や学生との距離が近く、アットホームな雰囲気のなか学べます。

 国際社会に必要な教養・基礎学力をキリスト教を基盤に育成

日常生活やビジネスの中でも通用する、キリスト教を中心とした宗教的な教養を高める教育を推進しています。「Mission in Dialogue A・B」の授業では、韓国の監理教神学大学の学生と共に現代社会のキリスト教宣教について、日本または韓国でフィールドワークを行い、学びます。国際交流のなかで多角的な視点を養うとともに、国際社会で活躍するために必要なコミュニケーションスキルなども身につけることができます。また、専門的な文献講読のために必要となる英語はもとより、ラテン語やドイツ語、ヒブル語、ギリシャ語など、さまざまな言語に関する授業が充実しているのも神学部の特徴です。

 人間理解といのちの理解を深めるディアコニア・プログラム

神学部は「共に歩み、仕える人」を育成し、社会福祉の現場や教会に送り出すために、「ディアコニア・プログラム」を実施しています。ディアコニアとは奉仕の業を意味し、本プログラムでは、NPO法人や社会福祉施設などの現場へ赴き、スピリチュアルケアについて実践的に学ぶ機会を設けています。また、お互いが交流を深めさまざまなテーマについて体験的に学ぶワークショップ型の授業も開講。福祉現場で働く講師陣と一緒に、人間理解を深めます。

ゼミ紹介


▶紹介するのは… 橋本 祐樹ゼミ



橋本祐樹 准教授
関西学院大学神学部卒業。
同大学大学院神学研究科博士課程前期課程、後期課程修了。
宮崎と神戸で牧師を務めた後、
ドイツ・ハイデルベルク大学神学部博士課程に留学。
博士(神学)。

実践の現場や当事者との出会いは単なる学びを超えたものになる

私が研究領域としている実践神学は、キリスト教の実践的な課題を研究対象とするものです。私自身は、20世紀前半のナチス・ドイツの時代に活動した牧師、神学者ディートリヒ・ボンヘッファーという人物の実践に興味を持ち、研究を始めました。彼は、ヒトラーに対する抵抗運動に携わった人物です。もちろん牧師として対人的な援助、礼拝、説教、教育といった実践にも取り組みました。彼の遺した著作などを用いてボンヘッファーの実践とその実践を支えた彼の思想を研究し、現代のキリスト教のあり方について考えています。
私のゼミでは、学生は現代社会におけるキリスト教の多様な実践的テーマから各自で課題を定めて研究します。例えば、自死者遺族の癒やしのプロセスにおいて「信じること」がどのような機能を果たしたのかを、文献調査と当事者へのインタビュー分析から明らかにしようと試み、それによってキリスト教の対人的な援助の課題に取り組んだ学生がいました。問題意識をもって文献に取り組み、現場や当事者に向き合うことには、単なる学びを超えた意味があると思います。クリスチャンではない学生とクリスチャンの学生の双方が集うゼミでの研究活動を通して、広い視野からものを考える力を身につけて欲しいと願っています。


▶このゼミの卒業生



日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業部
エレクトロニクス・サービス営業部
森 翔太
2020年度
神学部 キリスト教思想・文化コース卒業

多角的視野から学びつつお客さまの困りごとを解決

「神学部はクリスチャンばかり」と思われがちですが、一般入試やスポーツ選抜入試での入学者を含め、クリスチャンではない多彩な経歴の学生も在籍しています。献血活動や大学のキャンプ施設の運営を担う学生団体(宗教総部)の活動に打ち込み、部長も務めた私は、実践神学を研究する橋本祐樹先生のゼミに入りました。橋本先生は「学生団体のトップとしてどのように後輩の指導を行うのか。そこにキリスト教から学ぶことはないか」など、私の研究テーマに対し、さまざまなアドバイスをくださいました。ゼミでの研究や討論を通じて、多角的な視野をもつことの大切さを深い意味で理解できたと思います。
私は今、IBMでコンサルタント営業の担当として、電気・エレクトロニクス分野の顧客を訪問して課題を伺い、解決する方法を提案する業務をしています。多面的なアプローチからお客さまの困りごとを解決することは関学のスクールモットー“Mastery for Service”にもつながっていると感じています。