建築学部

建築学部

 2021年4月 NEW 

グローバルな視野で建築と都市の未来を創造する

建築学部は、デザイン、マネジメント、工学、人文社会など幅広い視点から建築・都市を学ぶカリキュラムを通して、国際社会・地域社会で活躍する建築家、都市計画技術者、まちづくりリーダーの育成を図ります。また、都市の成熟化が進む日本の中で新たな課題に挑戦することはもちろん、建築を通して世界を舞台に活躍できる人材の育成もめざしています。世界の国・地域は、それぞれ文化や考え方が異なります。そこで国内外のフィールドワークを充実させ、その国・地域の現場理解、課題発見、課題解決への力を育みます。

●基本DATA
学生数 421名  募集人員 132名  専任教員数 18名
●取得可能な資格
・一級建築士・二級建築士 ・木造建築士試験受験資格※1 ・1級・2級建築施工管理技術検定受験資格※2 ・学校図書館司書教諭 ・国際バカロレア教員認定証(DP)
※1 建築士試験の受験資格を緩和する改正建築士法が2020年3月に施行されました。大学で指定科目を修めて卒業すれば、一級建築士試験を「実務経験なし」で受験可能となります。
※2 卒業後に3年以上(1級)、1年以上(2級)の実務経験が必要です。試験制度については将来変更される可能性があります。

学生インタビュー



岸田早映香さん
建築学科2年
兵庫・長田高校出身

■学部の学び
2年生から建築や設計の授業が増え、建築家に近づいていると実感

母が建築士、父が戸建住宅の提案・販売の仕事をしていることから、私も建築士になりたいと思い、建築学部に進みました。1年生の頃は教養を身につける授業が多かったのですが、2年生になってからは建築計画や材料学など、建築にかかわる専門的な学び・実習が増え、夢だった建築家に少しずつ近づいていると実感しています。設計演習では、手書きやCADを使い建物の設計図面を描いたり、自ら模型を造ることもあり、子どもの頃からものづくりが好きだった私は楽しく学んでいます。

■もう一つの学び
オーストラリア・アデレードに派遣。建築・街づくりへの視野を広げたい

 「ライフキャリア入門演習」や「グローバルスタディ入門」という授業では課題発見・解決の訓練として、SWOT分析※1やKJ法※2などを学びました。また、2年生の3月から建築学国際プログラムでオーストラリアのアデレード大学に派遣されました。アデレードは「健康に暮らすための持続可能な都市」として在来種の植物による緑化事業を推進するとともに、中世ヨーロッパ調の建造物が多く建ち並び、歴史を感じられる街。建築や街づくりは国・地域によって異なるため、現地を実際に見ることで自分の視野が広がると考えています。将来は目標である一級建築士になって、顧客の要望に応えつつ、省エネなど社会の課題を解決する住宅をつくりたいと考えています。
※1 自分や組織の状況を、整理して分析する方法
※2 断片的な情報・アイデアをカ整理・分析していく方法

学科の特色

 「アート×テクノロジー×マネジメント」時間軸の中で、建築の可能性を追求

これからの建築を考える時、持続可能な社会に向けて建てるだけでなく、建てた後も使い続けていくために建築のライフサイクルを意識することが重要です。また、巨大化、複雑化する建築プロジェクトにおいては、マネジメントという視点も必要になります。建築学部では、「工学」と「芸術」をプラットフォームに、人・もの・場所の関係を読み取り、建築と社会の回路をひらくマネジメントについても学修します。さらに、家具をはじめ住宅などの建築、建築物の集合体としての都市空間にいたる幅広いスケールを横断し、物事を思考する能力を育成。住民に愛され持続可能な都市や街とは何か、固有の地域文化や秩序、美をも含めてその可能性を追究します。

建築のタイムライン 関学建築ではアートとテクノロジーの2領域にマネジメントという独自の視点を加え、時間軸の中でさまざまな建築の可能性を追求します。

 演習やプロジェクトで力をつける多彩で実践的なカリキュラム

本学部では、入学してすぐに演習科目が始まります。1年生では、空間スケッチ、建築製図の方法、建築プレゼンテーション技法などの基礎的なスキルを修得。2年生では、具体的な設計課題を通して単体の建築デザインから都市デザインのスケールまで連続的・一体的に計画提案できる技術を身につけます。このほか、建築デザインおよび都市デザイン演習では、CAD、CG、測量技術、BIM、環境工学や構造分野における解析プログラムの作成、フィールド調査やまちづくりに関するスキルを演習・実習形式で学修。また、自治体、企業、NPO・NGOなどと連携したPBL(課題解決型学習)や、フィールドワークも盛んです。国外も含めて、そこに暮らす人々とともに学ぶことを重視しています。

主な研究紹介

 建築空間をつくる仕組み

 建築空間を誰がどのようにつくるか建築生産の在り方を探る

建築生産とは、建築空間を創造するにあたり、誰がどのようにつくるか、つまり建築空間をリアルなものにつくり上げていく方法や仕組みを考える学問です。国内外における建築生産システムを調査し、企画、設計、施工、運用(維持管理)、さらに解体といった建物のライフサイクルの中で、各段階のマネジメントやプロジェクトの生産性向上・効率化を探りながら、特に地域の文化・社会的特性を考慮した研究をしています。

 建築構法・建築生産研究室 金 容善 准教授


 まちづくり

 これからの都市の在り方に関する仕組みの構築と制度づくりを研究

人口減少と今後の世帯数減少、コンパクトシティ化などを背景に、これからの都市計画では、すでに整備されているインフラや施設などをより有効に活用していくことや、それらを担う住民・地域組織などの連携を含めた「まちづくり」が重要になってきます。そこには、地域の持続性を保つため、付加価値を高めるような住環境づくり、コミュニティづくりも含まれます。研究室ではさまざまな要素が入り混じるまちに関する仕組みの構築と制度づくりに取り組んでいます。

 住環境・まちづくり研究室 清水陽子 教授


 総合力と構想力

 社会環境を踏まえた新しい建築空間の構想

建築を多様な条件のもとでいかに設計するか。具体的な建築設計手法や建築設計理論について研究しています。重視すべきは、素晴らしい建築空間はいかに実現されるのか、個々の建築空間が、既存の街や都市とどのように関連して社会環境を形成するかです。建築はさまざまな知識や技能を必要とする分野で、設計においては色々な領域を横断的に捉える視点と、そこからプランを展開する構想力が欠かせません。当研究室では、多面的で総合的な建築設計能力の育成をめざします。

 建築デザイン研究室 米田 明 教授

研究室紹介


▶紹介するのは…建築学部 建築学科 原 哲也研究室



原 哲也 教授
京都大学工学部建築学科卒業。
同大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、
竹中工務店設計部にて一級建築士として活躍。
作品に大阪木材仲買会館、ニフレル、エキスポシティ、
ピオレ姫路、琵琶湖ホテル、京阪京橋駅・京阪モールなど。

アーバンスケープを重視し、その場所にあるべき建築デザインを実現

建築とは文化、歴史、アート、社会情勢など広範な知見をベースに最先端の工学技術を活用し新しい空間体験を生み出そうとする行為です。私のゼミでは建築論をはじめさまざまなテキストを通して建築への理解を深め、また建築とアート・テクノロジーをテーマに制作課題に取り組み学生たちが建築へ独自のアプローチができるよう指導していきます。フィールドワークでは私の建築作品を中心に現地を訪れ、木と最先端工学技術の融合、水と光の空間演出を支える構造デザイン、景観から導き出された有機的フォルムなど、作品のコンセプトを実体験により理解し、また庭園や茶室から日本の伝統的感性を学び卒業設計に取り組みます。設計において私が重視するのは「アーバンスケープ=都市の様相」です。都市にはその場所が持つさまざまな特性があります。修士課程ではこの特性が生み出す都市の様相に着目し、例えば四天王寺を核とする信仰の場の歴史的特性の可視化、街の表層に着目した 神戶居留地の空間モデュールの継承といった、場所に固有の特性から新たなアーバンスケープを獲得していく事をめざしています。このように都市が生み出す様相について、多方面からの分析とそこでの新たな発見を建築として実体化していくことが研究のテーマです。


▶このゼミの卒業生



株式会社大建設計
広島事務所
設計室
西村大地
2019年度 総合政策学部 都市政策学科卒業
2021年度 総合政策研究科 博士課程前期課程修了

原先生の口癖である「大きくつくれ」をモットーに設計に向き合いたい

原哲也先生のゼミでは毎週のように課題が出されます。建築学科(当時、現・建築学部)の授業である設計演習と同時並行のため、「設計漬け」の毎日で技術も磨かれました。大学4年生の時に全国の大学生・大学院生が参加した設計コンペで入賞できたのも、設計漬けの日々のおかげだと思います。原先生はいつも「大きくつくれ」と口にされています。その真意を私なりに考えると、「建物が建つ周囲の環境や地域全体、あるいはその地の歴史や文化なども設計に取り入れる」というもの。
「メリケンパーク(神戸港)内にリゾート施設をつくる」という大学時代の最後の設計演習で、私は六甲山から港に至るまで周囲の環境や歴史などを考慮した設計案を提出し、最優秀賞を受賞。原先生から「その視野の広さを忘れずに設計に取り組みなさい」と言っていただきました。大学院を修了後に大建設計に就職、現在は公的施設の設計を担当する一方、一級建築士資格取得に向けた勉強にも励んでいます。今後も原先生の言葉を忘れず、設計に向き合っていこうと考えています。