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情報を鵜呑みにせず、批判的に見ることが大事
文学部景山洋平 准教授【後編】
現象学の視点からワクチン接種に関する情報を考える
人間は自分の知識だけですべての判断ができるかと言えば、そうではありません。専門家の提供する情報を信頼する、あるいは複数の専門家が同じことを言っているから「正しいんだろう」と思うのが、多くの人たちの共通認識であると思われます。新型コロナウィルスワクチン接種に関しては、有効だとする専門家の情報が非常に多く存在しています。ところがその一方で専門家が発信した情報かどうかがよく分からない情報がSNSなどで流布、それを信じる人たちが一定数います。私は医学の専門家ではないので、ワクチンの有効性の有無については断言できませんが、SNSの情報を信じる人が存在するという事実は、現象学的にも非常に興味深いケースと言えるでしょう。
立ち止まって自分の視点で物事をとらえなおそう
情報通信技術の発達で、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどが普及し、情報伝達の形は大きく変わりました。ツイッターのように文章量が短くなればなるほど、刺激的で極端な意見が受け入れられやすく、あっと言う間に全世界に広がってしまいます。前述の新型コロナウィルスに関する情報やトランプ前アメリカ大統領が発した一連の問題発言はその典型です。大量の情報の中から、一つ一つ自分の視点でこれらの情報をとらえなおすことが重要です。情報を鵜呑みにするのではなく、批判的に見る、つまり「それは本当なのか」と考え直してみることが必要です。現象学を学ぶことによって、そうした姿勢を身に付けることができる。これが現象学を学ぶ意義の一つであると思います。
ドイツと日本の哲学の古典を通して「考える訓練」を
私のゼミでは、3年生のゼミは自分自身の力で生の資料にあたり、頭をひねる訓練の場。ハイデガーの「存在と時間」と西田幾多郎の「善の研究」をみんなで読む形で進めています。担当のゼミ生が「考えるべきと思うこと」を発表、それを聞いた他のゼミ生からの不明点や私が問題提起した点について、全員で議論を行います。一方、4年生のゼミは卒業論文の指導が中心。どんなテーマに取り組むのかは本人に任せていますが、4年生になったばかりの頃はテーマが不明確なため、私と対話をしながら「自分が何を問題と思っているか」を明らかにして、卒業研究に取り組んでもらいます。過去には過労死、映画作品について哲学的考察をした例がありました。
さまざまなことに挑戦し、興味あるものを見つけて欲しい
これから大学に進むみなさんには、何でもいいから強い興味を持って欲しいです。何かに出会わないと、人としての成長はありません。しかし何かを始めてみないと何に興味があるのかが分からない。興味を持つ前提として、いろいろなことに手を出してみるといいでしょう。大学に入ったら、ぜひさまざまなことに取り組んで、興味のあることを見つけて欲しいですね。それから本を読む習慣はぜひ身に付けてください。大学生活において本を読むのは必要なことですし、その習慣はあなたの人生にとって有効なものになるはずです。そして哲学の研究者としては、世の中の情報に対し、鵜呑みにせずに立ち止まって考えるようにして欲しいと思っています。