What We Want Students to Learn

世界にも人生にも影響を与えるキリスト教

神学部加納和寛 准教授【後編】

ソ連崩壊、激動の国際情勢が私の進路を決めた

 両親がクリスチャンで、私自身、ミッション系の中学、高校に通いました。ただ、歴史に関する本やドストエフスキーの小説を読むのが好きだったので、中学の頃までは歴史の教師になりたいと思っていたんです。転機は高校生の時、ソ連が崩壊し、国際情勢が大きく変化するのを目の当たりにしたことです。これからの世界や自分の人生を考えるようになり、その過程で、世界を動かすファクターで、人生にも関わるキリスト教を深く学びたいと思うようになりました。組織神学を専門にするようになったのは、一番よく分からなく、逆に、分かると面白そうだなと思ったからです。日本では研究者の少ない分野だけに、やりがいを感じることも多いんです。

自分を見つめ直す機会となったドイツ留学3年間

 学生時代、キリスト教の歴史を教える先生から「神について学ぶことは人間について学ぶことだ」と言われ、神学を勉強するのがより面白くなりました。人生観が大きく変わったのは、ドイツに留学した3年間です。日本での私は、国籍が日本という意味でマジョリティー、キリスト教徒という意味でマイノリティーでした。ドイツでは、日本人という点でマイノリティー、キリスト教徒ではマジョリティーに逆転したんです。当たり前のことが当たり前でなくなる体験は、自分や社会を自分の頭でもう一度考え直す機会になりました。世界をフィールドに学ぶことは、自分を大きく変えます。学生の皆さんも、ぜひそうした体験をしてほしいですね。

人との出会い、神との出会いが用意された関学

 開架式の書棚を囲むように、たくさんの勉強机が配置されている図書館。直線にせず、中央芝生を囲むように作られた楕円形の通路。関学は、人と出会うこと、自分と向き合うことの両方が出来る場所がいろいろ用意されている素晴らしい大学です。大礼拝堂がなく、全ての学部に小規模なチャペルがあるのも特徴的です。授業の合間のひとときに神に出会い、人に出会う時間を作っています。一人一人の学生を大切にしようという精神が、ここにも表れていると感じます。「神とは何か」「教理とは何か」と理論的に考えることが多かった私も、関学に来て、一人一人の体験や人生から出発するような神学の考え方も大事なんだと気付くことができました。

博物館・美術館でホンモノに触れる喜びを求めて

 博物館、美術館に行くのが好きで、特に初めて行く場所では、できるだけ足を運んでいます。現地でホンモノに触れる喜びは、ネットでは得られません。海外では、客が少ないと学芸員の方が話しかけてくれることも多く、町の歴史について興味深い話を聞けることもしばしばです。たまに、話が止まらなくなる方もおられますが(笑)。研究の方では昨年、ドイツの神学者が大学生向けに書いた「神がいるなら、なぜ悪があるのか」という本を翻訳しました。東日本大震災をきっかけに高まった、神がいるなら、なぜ不条理な災害を未然に防いでくれないのかという問いに、答えようとする著作です。私自身も、そうした問いに目をそらさず、応答していきたいと考えています。

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