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自分の道を歩むことができる人になるために
経済学部野村宗訓 教授【後編】
民営化を推進するサッチャー政権下の英国へ留学
私は関西学院大学経済学部で経済政策の小西唯雄ゼミで学び、大学院に進学して博士課程を修了しました。その後、他大学の講師・助教授を経て、1989年にイギリスのレディング大学に留学。当時、首相だったマーガレット・サッチャーが積極的に民営化・規制緩和を推進していた時代です。現在、わが国で進められている電力市場への競争導入を、英国は既に30年前に実施していました。国営で独占の電力会社は大規模発電所の建設や送配電網の整備には都合がよかったのですが、競争が機能していないために非効率が蔓延していました。同じように経営効率の低下は他の国営企業でも起きていたため、水道や鉄道産業でも次々と民営化が実施され、私の研究対象も広がっていきました。民営化・規制緩和の研究から見えてくるもの
サッチャー政権は、民営化・規制緩和の取り組みを進め、競争原理が導入されて市場は活性化しました。しかし、民間企業は「おいしいところ」でビジネスをしたいと考えます。電力や水道、鉄道のように国民生活に欠かせない重要なインフラ事業では、都市部と過疎地でサービスに格差が出てしまう恐れもあります。したがって、公的支援が必要となるケースも残っているのです。自由化以降、競争によって一時的に電力価格は下がりますが、天然ガスの値上げなどの要因から上昇する可能性もあります。民営化・規制緩和によって光熱費・水道代・交通運賃などの公共料金が実体経済の動きに応じて変動するようになったのです。つまり民営化や規制緩和が自動的にサービス向上と料金低下をもたらすとは断言できないのです。世界のニュースをキャッチし、現実の変化に敏感になる
このように民営化・規制緩和の研究を通して、ダイナミックに変化する経済と社会に触れることができます。これがこの分野の面白さと言えるでしょう。私の授業では受講生に現実動向に敏感になってもらうため、講義中にニュース記事を10分程度で読んでもらい、毎回コメント用紙にその内容や感じたこと、疑問に思ったことなどを書いてもらっています。その際によく話すのは「日本のニュースだけではなく、世界のニュースも読むこと」。日本で流れるニュースは、どうしても国内と接点がある内容が多くなってしまい、国際的な関心とは方向性が異なることも少なくありません。将来の生きる世界を広げるためにも、SDGで提起されている視点から積極的に海外のニュースに触れることは大切です。
理想の将来像に近づくために大学4年間ですべきこと
ゼミの卒業生には、国内の大企業に入社する人もいれば、ベンチャー企業で働く人、世界の企業をわたり歩いてキャリアアップをしている人もいます。「有名な会社に入社すること」が正解ではありません。「自分のタイプに合うところ」を探すのが最も重要なことだと思います。どのような道に進むとしても、理想の将来像として「どんな人になりたいか」を思い描き、そのために学生時代に「やるべきこと」をじっくりと考えるのが大事です。社会人になると「お金は借りられるけれども、時間は借りられない」のが実情ですが、大学時代に時間をうまく活用すれば、将来は間違いなく広がります。自らの目標達成のためには「逆境を順境にする」という心構えで様々なチャレンジをしてみてください。私たち教員と事務スタッフもそんな人達を応援していきたいと思っています。